子どもが出会う犯罪と暴力―防犯対策の幻想 (生活人新書)



子どもが出会う犯罪と暴力―防犯対策の幻想 (生活人新書)
子どもが出会う犯罪と暴力―防犯対策の幻想 (生活人新書)

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自分を守る
性犯罪から自分を守るトレーニングの重要性を説く。そして習ったことを実行できる力とは、主体性と身体性にあり、主体性とは自分を尊重できる意識、身体性とは即座に躊躇せず実行する敏捷な身体反応という。確かにこのように、たとえばびっくりするような大声をあげたり、相手の思っていない行動をすることは、誰もいない場所でポケットベルを鳴らすよりはるかに効果的のように思いました。

前半部分と後半部分がが矛盾していませんか?
前半においては昨今の治安悪化言説が、単に「体感治安」の悪化に過ぎないということを、河合教授の名著「安全神話の崩壊というパラドックス」をなぞることで明らかにしていく。マスコミが無駄に煽っているだけで冷静に統計を眺めれば、件数は過去と比べて遥かに減少していること、また犯罪自体が圧倒的に身内の手によるものであるということ、ここはなんど強調しても強調しすぎるということはないでしょう…。

ただ、後半の性犯罪に関する言説に入ると前半で指摘していたものがなんであったのかと思わせる著者自ら煽る側の言説に加担しています!少年犯罪全般と同様に性犯罪に関する言説を分析してみようという気には著者はならなかったのでしょうか?

性犯罪は増加しているのでしょうか?性犯罪はこれまた顔見知りによるものが大半ではないのでしょうか(後半に関しては性犯罪においても触れているだけに余計不思議です)?

CAPの有益性を主張する言説は、それこそ環境犯罪学に基づく安全マップを批判しながら充分に両立可能ななにかにすぎないようにしか見えません(ともに子どもに対する安全教育の重要性を強調するという点でね)。もちろん、安全教育それ自体はなされないよりはなされるほうがましでしょうが、それこそ社会全体を不安と不信にみちみちさせてまで推進すべく危機を煽るほどのものなのか?という疑問こそ前半部分で述べていることと読めるだけに残念でなりません。

ちなみに大声を上げる重要性を説かれていますが、大半を占める加害者である身内、両親に家庭内で性虐待をなされたときに大声をあげてもほとんど意味をなさないように思えてならないのですがね…。

防犯対策の幻想
「子どもを守ろう!」。このスローガンを元に広がる防犯対策。その防犯対策は、主に路上に現れる「不審者」に視点が向けられる。しかし、現実に子どもが出会う犯罪や暴力は、家族や隣人など、子ども達が良く知る人物によるものが圧倒的に多い。現在行われる「防犯」の問題点、そして、本当に子どもを守る方法を考察する。
と言ったのが内容か。
さて、内容であるが、基本的には、前半で、近年、メディアで言われている「子供を巡る犯罪の凶悪化」というムードへの懐疑的な見方。「不安」が広がることの危険性。そして、それに基づく「防犯対策」の脆弱性が指摘される。後半では、著者の活動などを中心に、真に子供を守る為の方策を模索する、という構成になる。
前半の子供を巡る犯罪の凶悪化ムードのウソなどは、比較的、多くの書でも指摘されることではあるが、報道などを通して凶悪化を思っている人は多いのではないかと思う。そして、それに基づいた「外部の不審者」探しがいかに無意味なことか、また、ケースファイルを用いて語られる、「不審者」冤罪の実態などはなかなか考えさせられる。また、近年、流行している「防犯マップ」作りも、それ自体はともかく、それによって被害にあってに「行ったのが悪い」などと責められる危険性があるなどという指摘はなるほどと思わされる。
著者の提案する対策は非常にシンプルである。それは、「○○してはいけません!」と子供の「選択肢を狭める」のではなく、正しい知識、対策を与えることにより「選択肢を広める」というもの。単純ではあるものの、いや、単純だからこそ良いというように思わせてくれる。そういう意味でも賛同できる内容だ。
最後に気になった点を。まず、監視社会化の危険性を訴える際、致し方の無い部分があるとは言え、著者の訴え方も「不安」を利用した形であること。「不安」の組織化を批判しながら、不安に訴える方法が良いのか? という部分。次に子供の性犯罪やDVなどの実態について、性犯罪を行った教師や警官の例を次々と出したり、DVを行う者は、幼少時代にDVを受けていたとい例を連呼する部分。「全てがそうではなく、少数である」とは断っているものの、それらに対する偏見を植え付ける結果になりはしないか? 些細なことではあるものの、ちょっと気になった。
とは言え、色々と考えさせられる良書だろう。




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